Precioustome(12)

じゃ。あたしも疲れたからもう寝ようかなじゃなくて。宿題あったんだ。めんどくさいけど、やろ。

ひなたは明るくそう言ってその場を立って二階に上がっていってしまった。

志藤はジッと動かずにその姿を見送った。

おれは。

奏を選んだ。

さくらちゃんにはあんな風に言ったけど

もうこうなったら、奏に賭ける。

これで二人の間がどうなるわけでもないと思うけれど

確実に普通の楽しいだけの恋愛の道はなくなる。

だからあんなヤツ好きにならなければよかったんや

ついそんなことを思ってしまう。

一人になって

泣いたりしていませんように。

父親なんて全く無力で、情けない。

ひなたは明日の単語テストの勉強をしながら、だんだんとノートの文字が滲んでくるのがわかった。

手だけが勝手に動いて、スペルを綴る。

だいじょぶなんだよ

奏の言葉何度も何度も頭の中のぐるぐるして

いつの間に自分は彼のことをこんなにも好きで好きで好きでたまらなくなっていたことに今さら気づく。

そして、ノートにひとつぶ涙がぽとんと落ちた。

あ、奏。今日これから志藤さんがここに来るから。少し待っていて、

レッスンが終わった後、さくらは奏に言った。

え志藤さんが?

何だか妙な気がして思わず聞き返してしまった。

うん、そろそろ来ると思うよ。

と言っているうちにインターホンが鳴った。

前に座った志藤の表情があまりにもいつもと違うので奏はドキドキした。

いったい何を

ややうつむきながらも目だけ彼にやっていた。

手短に、言う。いや、言います。高遠奏くん。正式にホクトエンターテイメントと契約をしませんか、

おもむろに、そして改まって志藤はそう言った。

奏は驚いて静かに顔を上げた。

正確に言うと。今はクラシック事業部と、ではなく。ホクトの一般のタレントと同じ枠で。そして、その管轄は。ぼくです。

いつもの志藤ではなく、本当にいちタレントを目の前にしているように仕事モードの口調と表情だった。

し、志藤さんが

あくまで予測ですが。例のCMが放映になると、仕事のオファーが来る可能性があります。でもまだきみはそんなことよりもピアノに精進する方が大切。篠宮先生にそういうことはお願いしようかと思ったけれど、マネジメント経験がないので、その一切合財をホクトで負わせていただきたい。これは社長からの命令でもあります。

自分の知らない志藤がそこにいる。

きみがピアニストとして一人前になった時。その時はクラシック事業部に正式に所属してもらって、仕事などやってもらうことになると思いますが。今はきみがピアノに専念できる環境を作るための契約と思って下さい。基本的に仕事は取ってこないし、やらせません。

奏は膝の上に置いた拳に自然と力が入っていた。

志藤は奏を世界に出す決心をしました

奏の登場はこのへんから

奏が北都家に下宿するいきさつからさくらとの出会いはこのへんから

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